『脳は空より広いか』

ジェラルド・M・エーデルマン、草思社。

哲学の本だと疑わずに買ってしまった。著者はノーベル医学・生理学賞を取ったことのある脳神経科学者。つまりこの本は純然たる脳科学の本である。だまされたわけではないが、予定外の購入だった。
意識やクオリアがどのように生まれてくるのかについて、神経ダーウィニズムやダイナミック・コア仮説に基づいて説明している。ダイナミック・コアとは、「主に(すべてではない)視床-皮質系の内部で、再入力によってダイナミックに変動しながら相互作用するこの機能クラスター」(p.90)のことである。ダイナミック・コアという脳内現象と意識現象とは伴立関係にある、と著者は言う。つまりある単一の脳内の物質なり動きが意識を生み出しているわけではない、ということだ。
意識の問題をここまできちんとした理論を使って扱っている本は読んだことがなかったので、興味深く読むことができた。ただこれ以外の理論については全く触れられていないので、この理論に対する反論なり批評としてどんなものがあるのか、ちょっと気になってしまった(つまりこの理論の信憑性についての判断ができなかったということ)。私自身に、ダーウィニズムと聞くと身構えてしまうクセがあるせいかもしれない。
この本は「一般向けにやさしく」書いたと謳っているものの、全然簡単な内容ではない。巻末に丁寧な専門用語の解説は載っているが、それらの用語群の全体像がある程度わかっていないと、読み進めるのは難しい。脳と意識について興味がある人は手に取ってみてもいい。得られるものは大きいだろう。ただしこの本を読む前にもっと入門的な本を読んで、専門用語に慣れてから買うことをお薦めする。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。