『魂にメスはいらない』河合隼雄、谷川俊太郎

 ―ユング心理学講義(副題)。講談社プラスアルファ文庫。ユング派の臨床心理学者である河合隼雄と詩人である谷川俊太郎との対談集。河合の患者とのやりとり、治療法などを通じて、ユング派の臨床がどのように行われるのかがあぶり出されていく。そして、それが人間の心理分析、生死の問題、異常とは何かなど、興味深い話につながっていく。話の進め方としては、谷川がインタビュアーとなって河合がそれに答えるという展開になっている。この谷川の質問なりコメントが鋭くていい。本質をズバッと突いてくる感じに、こちらもドキッとしてしまう。
 夢の分析、アーキタイプ、アニマ・アニムス、母性・父性、グレートマザー・グレートファーザー、自我と自己などユングの言葉を絡めながら、「生」の根源に迫っていく。そのやり方は臨床の現場に立ち会っているようで真に迫る。
 とはいえ、私にとって夢の分析やアーキタイプという話はどうも胡散臭いという感じがしてしまって、心に対する解釈のひとつとしてはアリなのかもしれないが、それは本当なのだろうか、という思いが常について回った。この思いは、ユングやフロイトの心理学に向かうとき、いつも感じてしまうものだ。それは読者ひとりひとり違うものだろうが。
 本の中で日本と西洋の考え方の違いに触れている部分があり、日本は流れを意識した考え方をするのに対して、西洋はストラクチャーを重視する、というのは興味深かった。
 本書の最後には谷川の詩に対する河合のユング的解釈が数点載せられており、これはおもしろい企画である。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。