『PLACE TO BE』Hiromi

 上原ひろみ、2009年。彼女初の全曲ピアノソロアルバムである(日本版ボーナストラックにだけ矢野顕子が参加しているが)。待ちに待った、と言おうか。
 彼女の曲と曲名は実に良くマッチングしているので楽しい。適当に付けた曲名はおそらく無い。テーマがあって、それに基づいて音作りをしている彼女の姿勢は好きだ。例えを挙げれば、『another mind』での9「Tom and Jerry Show」、『BRAIN』での1「KUNG-FU WORLD CHAMPION」なんかがわかりやすい。その姿勢はこのアルバムでも貫かれており、タイトルを念頭に置いてその曲を聴くと、情景が頭に浮かんでくる。彼女の曲は音が詰め込まれていて元気なイメージがするが、このアルバムでは音数の少ない切なげな曲も多い。3「SICILIAN BLUE」ではシチリア島の美しい光景が曲になっている。5「SOMEWHERE」のどこか寂しげな音の粒。でもどこかに希望を持っていたい、というような切なさを感じさせる曲調。8「PACHELBEL’S CANON」のあの特徴的なコード進行の繰り返しの中に、彼女なりのピアノの音をさりげなく乗せていく感じは洗練されたイメージを喚起する。タイトル・チューン12「PLACE TO BE」は彼女にとっての居場所なんだろうか。それとも万人にとっての居場所を示唆しているのだろうか。華やかさは全くなくどこか荒廃的なイメージを持たせつつも、空から希望の光が差してくるそんな居場所。「PLACE TO BE」はそんなに明るく派手なところじゃないんだよ、でもあなたを静かに包み込んでくれる、そんな場所なんだよ、と彼女は言っているような気がする。ベガス3部曲「VIVA! VEGAS」はそのイメージの中に身を置くだけで楽しい。9「SHOW CITY, SHOW GIRL」、10「DAYTIME IN LAS VEGAS」、11「THE GAMBLER」の3曲だ。個人的に明るい感じで好きだった曲は、7「ILANDS AZORES」だ。これはポルトガル領アゾレス諸島の曲である。
 やっぱり上原ひろみはいい。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。