『ルオー展』北海道立近代美術館

 出光美術館所蔵ジョルジュ・ルオー展(会期:2009年10月28日~11月29日)。Georges Rouault(1871-1958)。代表作「受難(パッション)」や版画集「ミセレーレ」をはじめとする初期から晩年までの約170点の作品が展示されている。
 ステンドグラス職人の徒弟となり、かのギュスターヴ・モローの指導を受けたルオーは、印象派、キュビズム、未来派などの特定の流派に入ることなく独自の道を突き進む。太い輪郭、その中からあふれ出る光、豊かな色彩。彼を特徴づける言葉は数あれど、底流に流れるのはキリストに対する深い敬虔さだろう。彼の作品はカトリックに関するものだけではなく、道化師や娼婦、風景を描いたものも多いが、どれも宗教的である。彼の作品を観ていると、その真面目さに心が打たれる。
 1922年から手をかけ始めた「ミセレーレ」は彼の中期の記念碑的作品である。ミセレーレとは「憐れみたまえ」を意味するラテン語である。この一連の銅版画作品群はモノトーンにもかかわらず光に満ちあふれている。必ずしもキリスト教とは関係のない、上流階級の人間や社会に対する皮肉(批判といった方がよいかもしれない)を表現した作品も多いが、どれも宗教的思索に基づいたものであろう。ここで見せた精神は後の作品にも受け継がれていく。中期の油彩画ではその精神を保ったまま、新たな手法を見せる。一度描いた画面をパレットナイフで削り取ることによって、雲母のような輝きとマチエールを出現させるのだ。ここで版画とは違った種類の光の世界が現れてくる。
 後期になると、明るい部分がどんどん盛り上がってくる。1935年には友人(?)シュアレスの宗教詩「受難(パッション)」の挿絵(版画用の下絵だった)をそのまま利用した一連の油彩画を完成させる。ルオーの絵はいつの時代のものであれルオーそのものであるが、ここで描かれた油彩画が、私にとって一番馴染みのあるルオーである。キリスト受難の歴史を描いた作品群は豊かな色彩と光を併せ持ちつつも、悲哀さを感じさせる。このころのルオーが一番好きかもしれない。
 後期もさらに時代が経つと、塗り重ねられた絵の具はさらに立体感を増し、溶岩のようなマチエールを見せてくる。影の中に浮き立つ光の表現はさらに磨きがかかる。このころ描かれた風景画を見ると、フォービズムの絵画を見ているような錯覚にも襲われる。中でも1953~1956年に描かれた「聖書の風景」はとても好きな作品だ。
 ルオーほど、本物と印刷物の違いが際だつ作品はない。印刷されたルオーの絵はさほど感動を与えない。しかし本物に出会ったとき、印象は全く異なり、宗教的感動を与える。私は特定の宗教に属さないものであるが、ルオーの絵に対峙すると非常に敬虔な気持ちになる。一度は本物を見てみることを強くお勧めする。

北海道立近代美術館

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。