コラーゲンの摂取

 「コラーゲンを食べたら、どういう経路を辿って自分の身体のコラーゲンになるのだろう。」
 もう何年も前からこんな疑問を持ち続けていた。ところが1年半前に金沢医大の医師との話の中で、もしかしたらこの疑問は愚問かもしれない、という疑念を持つことになった。彼らはこんな風に言うのだ。コラーゲンを食べるなんて馬鹿げているよな、そうしたってコラーゲンにはならないのに。えっ、と思った。一番上で挙げた質問そのものを否定しているではないか。
 彼らの言う意味はわかった。コラーゲンは蛋白質である。蛋白質はそのままでは体内に吸収されない。そこで消化液によってアミノ酸にまで分解されて、そのアミノ酸が体内に吸収される。体内に吸収されたアミノ酸は色んな蛋白質の原料になる。その蛋白質がコラーゲンである必要はない。高校で生物を学んだ人であればそこまではわかる。私の疑問は、なのにどうしてみんなコラーゲンをせっせと食べるのだろう。きっとそこには何らかのメカニズムがあるはずだ、というものだった。でもその場ではそれ以上の話にはならなかった。
 その当時の私の得た情報では、彼らの発言を覆せなかった。健康食品会社は相変わらずコラーゲン摂取のキャンペーンを張っていたが、それらの根拠というものは非常に心許なかった。コラーゲン摂取を支えているものは、お客様の声だった。分子生物学をかつて囓っていた友人に聞いても、科学的にはコラーゲンを経口摂取してもコラーゲンにはならないんだけど、コラーゲンの多い食事をした次の日はなぜか化粧のりが良かったり、お肌の調子がいいんだよね、という何とも歯切れの悪い答えが返ってくるばかりだった。そう、少なくとも科学的には証明されていないのだ。そのことを断言していたのが福岡伸一の『動的平衡』(木楽舎)だった。彼はこの中で「コラーゲン添加食品の空虚」という項目を割いて、コラーゲンを経口摂取してもコラーゲンにはならないことを説明していた。その説明は、先ほどの私の説明をちょっと詳しくした程度のものだった。私はこの説明を信じていいのか、この話にケリを付けていいのか、実はちょっと悩んでいた。友人のお肌の調子の話が嘘だとは思えなかったから。
 Wikipedia(2009/11/20現在)によると(何でもWikipediaに頼ることは慎まねばならない。しかし嘘が混じっているかもしれない、という疑問を持ちながらWikipediaの記事を調べるのはいいのではないか、と思っている)、友人の感覚を庇護する記事が京都新聞(2009/1/24)で発表されたそうだ。それは京都府立大などのグループの研究によるもので、コラーゲンを食べることで皮膚の傷の修復を助けるメカニズムが働く、というものだ。コラーゲンは、分解されるとグリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アラニンなどのアミノ酸になる。コラーゲンを食べると、このうちのヒドロキシプロリンとプロリンからなるペプチドの血中濃度が、長時間にわたって増えるらしい。このペプチドが皮膚の傷を修復するのを助けるというのだ。この事実は、コラーゲンがそのままコラーゲンになる、というのとも違うし、コラーゲン摂取は意味がない、とするのとも違う。おもしろい研究結果が出てきた。この研究結果が正しいのかどうかはもうちょっと時間が経たねば評価できないだろうが、そのうちコラーゲン摂取の正当性(?)が評価される日が来る見込みが立っただけでも嬉しい。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。