『地頭力を鍛える』細谷功

 東洋経済新報社。「じあたまりょく」と読む。副題は「問題解決に活かす「フェルミ推定」」。
 「日本中に郵便ポストはいくつあるか?」、「世界中で1日に食べられるピザは何枚か?」。これらの質問に紙と鉛筆と自分の頭だけで3分以内に答えを出す。そんな途方もないと思われることを可能にしてくれるのが本書である。
 著者は頭の良さを3種類に分ける。「物知り」(知識・記憶力)、「機転が利く」(対人感性力)、「地頭がいい」(考える力)である。この本ではこのうちの地頭力にスポットを当て、これを鍛える強力なツールとしてフェルミ推定を取り上げる。(余談だが、本書では「物知り」の旗色はかなり悪い)
 地頭力とは何か。考える力である。地頭力のある人は新しい知識を次々と生み出せる。また、どんな状況にも対応できる力を持っている(わかりづらいかもしれないが、上で挙げた3軸の違いを念頭に置くと、少しは想像しやすくなると思う)。地頭力は原動力としての「知的好奇心」が無ければ始まらず、その上で守りとしての「論理思考力」、攻めとしての「直感力」を合わせた3つの力がベースとなる。そして地頭力は、「結論から考える」(仮説思考力)、「全体から考える」(フレームワーク思考力)、「単純に考える」(抽象化思考力)という3つの力から構成されるのだという(気づいた方もいらっしゃるかもしれないが、著者は「3」という数字にこだわりがある)。
 ひと頃「デジタルデバイド」という言葉が流行ったが、今の時代はこの格差も解消されてきており、これからはさらに先の「考える力」の格差による「ジアタマデバイド」の時代がやってきた、と著者は述べる。私はこれはビジネスに関わるごく一部の人達を分け隔てる壁に過ぎず、大多数の人にはあまり当てはまらない、と考えているのだが、どうだろう。まあ、それはいい。
 フェルミ推定は、冒頭で挙げたような「荒唐無稽とも思える数量について何らかの推定ロジックによって短時間で概数を求める方法」のことである。ノーベル賞物理学者であるエンリコ・フェルミがこういった問題に答えるのが得意だったために、この名前が付いたらしい。著者によると、このフェルミ推定に取り組むことで「結論から」「全体から」「単純に」考えるという地頭力を鍛えることができるのだという。多くのビジネスパーソンはこの3要素のうちのどれかが欠けている(例えば完璧主義者やセクショナリズムなど)ので、フェルミ推定に取り組むべきニーズは存在すると述べている。
 フェルミ推定だけが地頭力を鍛えるとは思えないが、なかなかおもしろい本ではある。フェルミ推定というのはそんなに難しい理論ではない。慣れてしまえば何となくでもできてしまう。つい書き忘れていたが、この本は結果よりも過程を大事にしている、ということを申し添えておきたい。
 日本中にゴルフボールが何個あるか、考えてみませんか?

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。