『I-XII』KING WEST MANRING VAMOS

 正確には『丘からの眺め』という題名の、ジャスティン・キングのアルバムだ。CDジャケットが全て標記タイトルで統一されていたので、敢えてこのタイトルにした。このアルバムの1曲目から12曲目まではジャスティン・キングのホームページのダウンロード販売のみで発表されていたアルバム『I-XII』と同一曲である。これはコラボレーションアルバムとして売られていたので、4人の名前を冠している。KINGはジャスティン・キング(Justin King)、WESTはドラマーのジェイムズ・ウェスト(James West)、MANRINGはベースのマイケル・マンリング(Michael Manring)、VAMOSはギターのカルロス・ヴァモス(Carlos Vamos)のことである。この他にヴァイオリンのリン・レンケン(Linh Renken)も参加している。13曲目以降はボーナストラックとしての位置づけだ。13曲目から19曲目は彼のファーストアルバム『Justin King』からのもので、20曲目は新曲のヴォーカル曲である。
 彼の曲の多くはメロディが感じられない。無いと言っても極端な言い方ではないと思う。進行はコードの流れに沿って何となく、という感じだ(何となく、という言い方は失礼かもしれないが、実際そうだ。ただしキレはある)。その点で前半(『I-XII』)と後半(ボーナストラック)は共通しているのだが、実際にはかなり毛色が異なっている。
 前半の曲名は、全て曲順にローマ数字が掲げられているだけだ。これは「先入観を持たずに聴いて欲しい」というジャスティンの意向らしい。その前半はものすごく前衛的だ。ライナーノーツでは「アコースティック・ギター進化系」と紹介されていたが、正直な話、私はちょっとした拒否反応を起こした。それまでずっとソフィー・ミルマンのジャズの世界にどっぷりと浸かっていたせいかもしれない(ソフィーの曲はヴォーカル曲で、メロディがしっかりしているから)。これは一部のギターオタクしか興味を示さないんじゃないか、とさえ思った。でも何度も繰り返し聴いているとさすがに慣れてくるのか、いいな、と思う曲も出てくるのが不思議だ。1『I』はのりのいいジャスティンらしさいっぱいの曲だ。他に3『III』、5『V』、7『VII』、9『IX』はまあまあいい。1曲おきになっているというのはたぶん偶然ではなくて、ジャスティンはアルバムを飽きさせないために1曲おきに雰囲気を変えたんだ、と勝手に思っている。そして私は偶数曲より奇数曲が好きだったということなんじゃないかと思う。
 後半はファーストアルバムから取られた曲が多いせいか、前半部よりもアコースティックギターらしさが前面に出ている。以前紹介した『Le Bleu』に通じる曲も多いと感じたが、『Le Bleu』ほどにはパーカッシブではない。曲別では、16『Square Dance』はタッピングが美しい軽快な曲だ。個人的に好きだったのはゆったりとして落ち着いた曲である18『Lullaby』である。
 でもやっぱりマニアックなアルバムだな、と思う。

amazonで見てみる
プー横丁で探してみる

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。