『チョムスキー入門』町田健

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 光文社新書。副題は「生成文法の謎を解く」。チョムスキーの生成文法理論について書いた本である。ノーム・チョムスキーは言語学者としての顔と政治批判活動家としての顔を持っているが、本書は純粋に言語学の本である(余談だが、もう一方の顔として書いた著作は結構おもしろい)。
 しかしこれは看板に偽りありといわざるを得ない。この本は『チョムスキー入門』ではなくて、『反チョムスキー教科書』あるいは『チョムスキーの生成文法批判』とすべき内容である。なるほど確かに生成文法の内容と変遷を丁寧に説明してはいる。初期の表層構造、深層構造からS構造、D構造に至り、それらが無くなりミニマリスト・プログラムに至までの道筋を順を追って解説している。専門用語の飛び交う複雑怪奇な生成文法理論を、初心者でもわかるように書いてはいる(その解説が間違っているという意見もあるようだが、私は生成文法初心者なのでその辺のことはよくわからない)。でもその間にいちいち茶々が入るのだ。こういった問題点がある、ここはおかしい・・・、と。まえがきにはチョムスキーの生成文法は「言語学のパラダイムに新しい変革を呼び起こす、まさに革命的な理論」と書いてあるのだが、本文を読んでも批判ばかりが先に立ってどこがどう革命的だったのかよくわからない。この本を読むと、チョムスキーの理論は勉強する価値がない、と思えてしまう。しかしこれほど有名な理論なのだから、そんなことはないと私は思う。『チョムスキー入門』と銘打つからには、チョムスキーの理論に沿った話の展開をすべきだと私は思う。その点で、この本は生成文法の入門書だとは言えない。
 そう言えば著者は『ソシュールのすべて』(研究社)という本も上梓しているが、その本の内容もソシュール以外の話が飛び交っていて、純粋にソシュールを学んだ気にはならなかった。こういう書き方は町田の癖なのかもしれない(悪い癖だ)。
 あとどうでもいいことだが、本書には「まとめ」も「あとがき」もない。議論が尻つぼみで終わっている。最後くらいきちんとまとめて欲しい。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。