『統計学でリスクと向き合う』宮川公男

 東洋経済新報社。副題「数字の読み方に自信はありますか?」。
 時に高校数学程度の数式が出てきてちょっと頭を使わなければいけないところもあるが、全体的には統計の基本をネタにした軽い読み物である。そう難しくはない。統計の知識が実生活のどういったところで役立てられているのかよくわかり、統計に興味を持たせる入門書(おはなし)として良くできた本だ。
 例えばこんな問題がある。A町からB町まで往きは平均時速80kmだったが、帰りの平均時速は20kmだった。全体の平均時速は何キロか。答えは時速50kmではない。このように、難しくはないが引っかかりやすい問題が取り上げられている。また、ダウ平均株価は平均という名が付いていながらこの価格を超える株価の会社がないのは何故かとか、満席のはずの座席指定車にいつも空席があるように感じるのは何故かなど、日常にひそむ疑問を統計学を使って答えてくれたりもする。
 この本の中で一番重要視されているのは、おそらく統計における2種類の誤りについてである。この誤りについて著者は何度も何度も繰り返し言及している。それは「正しいことを否認する」誤り(第1種の誤り)と、「誤ったことを承認する」誤り(第2種の誤り)の二つである。例えば物を捨てるか捨てないかを判断するときに、必要な物を捨ててしまうのが第1種の誤りで、必要のない物を取っておくのが第2種の誤りだという。この概念は統計において非常に重要らしい。しかしながら実際読んでいると、どっちが第1種でどっちが第2種なのかわかりづらくとても混乱する。そんなことは気にせずに、この区別があることだけを念頭に置いて読み進むのが良いのだろう。
 私がこの本の中で一番興味を持てたのは、著者が癌を宣告されてからそれを乗り越えるまでの過程である。病気を持つ者の苦しみの描写が真に迫っていておもしろい(おもしろいという表現はこの場合不適切だと思うが、他によい言葉が浮かばなかったので許して欲しい)。手術を受けるかどうか判断するときに行った統計学的考察、医者とのやりとりなど、どれも興味深い。この話題があっただけでも、この本を読む価値があった。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。