『分子進化のほぼ中立説』太田朋子

 講談社ブルーバックス。副題は「偶然と淘汰の進化モデル」。
 生物の進化については、長い間ダーウィンの自然淘汰が一般に受け入れられてきた。それに対して、いや、進化は偶然の賜であって中立的なんだ、という説が出てきた。ほぼ中立説(弱有害突然変異仮説)はこの中間であって、進化は偶然と自然淘汰のせめぎ合いの中で生まれるんだよ、という説である。例えば集団のサイズが大きいと自然淘汰が有効に働き、集団のサイズが小さいと偶然に支配されることが多くなると言う。本書はこのほぼ中立説について書かれた本で、前半はこの説の説明、後半は様々な分野におけるほぼ中立説の検証結果や今後の展望について述べられている。
 私はこれほどストレスの溜まる本を読んだのは久しぶりである。本書は生物進化についてかなり詳しい人を想定して書かれたのだろうか。そういった人達にとってはこの説の概論として役立つのかもしれないが、ただ単に進化に興味のある一般人にとってはわかり得ないのではないか。専門用語のオンパレードなのはいいとして、論理の飛躍があまりにも多すぎるのだ。AだからBということが当たり前のように述べられるが、それがちっとも自明ではない。おそらくその論理に必要な前提条件が提示されていないのだ。これであれば教科書の方がずっと読みやすい(教科書なら基本的に論理の飛躍は少ない。その代わり分厚くはなるけど)。著者はこの分野の第一人者らしいので、著者にとってあまりに当たり前のことは端折ったのだろうな、と想像する。
 お前の頭が悪いだけだよ、と言われそうだが、それにしても他人には勧められない。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。