『美しい演奏の科学』藤原義章

 春秋社。副題「生きたリズムの表現のために」。著者はヴィオラ奏者であり、指揮者である。本書は『新しいアンサンブル入門』という本の改訂版という位置づけである。
 この本を読むときに科学的であることにはこだわらない方がいいと思う。DNAだとかエンドルフィンだとか量子力学などというものは結局どうでもいい話だ。たぶん著者は科学というものを勘違いしていて、「科学風」な言葉の羅列が本書の約半分をも占めてしまっているのは残念だ。私が思うに、それらは読み飛ばしてもいい。読むべき箇所は中盤にさしかかるところ以降である。
 機械的リズム、すなわちメトロノームのリズムがイン・テンポなのではない、という主張は、私にとって目から鱗であった。彼は自然リズムという概念を持ちだし、そのリズムと拍、拍子、フレーズなどとの関係を詳細に説明していく。アウフタクト(ふつう弱起と訳すが、彼はこの訳を適切でないとする)の位置づけの説明など、役に立つところが多かった。本書の中心的話題は、副題にもあるように「リズム」である。ショパンやベートーベンなどの豊富な譜例を参照しながらの説明は説得力があってわかりやすい。
 リズムの他には、フォルテとピアノ、クレッシェンドとデクレッシェンド、休符とフェルマータの意味するところ、音程の問題なども扱っており、それらもおもしろい。
 演奏方法に行き詰まりを感じていた私にとって、気づかされることの多い本だった。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。