『文字のデザイン・書体のフシギ』祖父江慎 他

 神戸芸術工科大学レクチャーブックス…2。左右社。本書は神戸芸術工科大学にて行われた4人による特別講義をまとめたものである。それぞれに興味深い内容でおもしろい。以下、一人ずつ取り上げてみたい。

祖父江慎「ブックデザインとかなもじ書体のフシギ」
 グラフィックデザイナーである本講義は、彼の手がけた本のデザインの紹介から始まる。本の内容をすべてブックカバーに印刷したもの。本の中の文字が途中から斜めになったり、行幅が変わったりしているもの。ある一定の法則でフォントが混在してある本、などなど。巷(ちまた)で話題になっている電子ブックではこれらのことは実現できないんだろうな、と感じた。それを思うと、ブックデザインにこだわりのある作家あるいはデザイナーがいる限り、紙媒体の本はこれからも生き残っていくのだろう。何となくほっとする。
 後半は、かな文字書体について。明朝体のかな文字やカナ文字って本当に明朝体なんだろうか。明治の頃は明朝体のカタカナもあったけど、今はかな文字は草書体でカナ文字は楷書体になっているんだよ、という話。林家ペーさんはカタカナ?ひらがな?という話。その他色々とおもしろい話を、独特のゆるい口調で展開している。いやでも文字に興味を持ってしまう講義。

藤田重信「フォントデザインの視点と細部」
 フォントデザイナーである藤田は、自身の作った「筑紫明朝-L」を中心にした話題を提供している。他のいくつかの書体と共に並べて、それぞれの書体の特徴を明確にしつつ、筑紫明朝-Lを作成したときのこだわりなどを述べる。フォントを作るってこういうことなんだ、と腑に落ちる。漫画の吹き出しが、漢字がゴシックで仮名は楷書にしたアンチックという書体で組まれていることは初めて知った。でも、かなり硬い講義。

加島卓「デザインを語ることは不可能なのか」
 メディア論を専門とする加島による本講義は、音楽を語ることは不可能なのか、という話題をとっかかりにして、デザインを語る、という行為自体を主題にしている。デザイン雑誌の歴史をひもときながらの、デザインがこれまでどう語られてきたのかという説明は、実にわかりやすい。商業デザイナー、芸術家などは、本講義のキーワードのひとつである。

鈴木広光「制約から見えてくるもの……嵯峨本のタイポグラフィ」
 嵯峨本とは、「江戸時代初期の活版印刷術によって作られた、ある一連の本」のことである。ここでは、慶長13年刊の嵯峨本「伊勢物語」を題材に話が進められていく。この木活字を使った伊勢物語は、まるで筆で直接書いたように美しい。ひらがなが主体のこの本には、何と2100もの活字が使われているという。角倉素案(すみのくらそあん)の文字に対するこだわりを感じる。読み物として、おもしろい。

amazonでみてみる

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。