『リスクにあなたは騙される』ダン・ガードナー

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 早川書房。田淵健太訳。副題「「恐怖」を操る論理」。
 我々がいかに「頭」(理性)でものを考えるよりも前に、「腹」(感情、感覚)の影響を受けるか。そしてその「腹」はいかにリスクを正当に評価していないか、ということが、繰り返し様々な切り口から述べられている。例題は豊富だ。多くの研究結果、テロや犯罪、病気に関するメディアの取り扱い、言質、それらについての世論調査結果・・・。著者は人々が感じているリスクの大きさと、それらが実際におきる確率とを見比べ、いかに実際の危険を過小評価し、ほとんど起きないことをどれだけ過大評価するかを、実例に基づき紐解いていく(しつこいくらい)。
 例えばほとんど起きることのない病気で亡くなる悲劇的事例は大きな記事になり、より多くの人が亡くなる糖尿病のことは記事になることは少ない。そして次が大事なことだが、「腹」は糖尿病でよりも前者の病気が原因で自分が亡くなるリスクの方が大きいと思ってしまう。これはおかしなことだ。しかし、この例にとどまらず、「頭」は「腹」には勝てない。
 リスクをあおり立てることは、政治家やメディアの常套手段である。それが本当のリスクである必要はない。支持率や視聴率を上げるためには、正直にもこの世の中が平和で満ちあふれている、と述べるようなことは決してしない。リスクによる恐怖をあおって利益を得ようとする人々は、政治家、報道人に限らず、数多い。また、皮肉にも彼ら本人もリスクに騙されていることも多い。そして世の中全体がリスクを見誤る。もちろんあなたも。
 読んでいると悲しくなる。私の「頭」も「腹」に勝てそうにない。自分の「腹」にも他人の「腹」にも。私は日々あふれるニュースのどれを信じていけばいいのだろう。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。