『ベイズな予測』宮谷隆

 リックテレコム。副題「ヒット率高める主観的確率論の話」。

 モンティ・ホール問題というものがある(この本には出てこない。以下Wikipedia「ベイズ推定」からの引用[2010/6/4])。

 3つの扉のうち1つだけに賞品が入っていて、回答者はそれを当てたら賞品がもらえる。ただし扉は次のように2段階で選ぶことができる。
1. まず回答者は3つの扉からどれか1つを選ぶ。
2. 次に、答を知っている司会者が、選んでいない扉で賞品の入っていない扉1つを開けてみせる。ただし、回答者が当たりの扉を選んでいる場合は、残りの扉からランダムに1つを選んで開けるとする。このあと回答者は扉を1回選び直してもよい。
 2で扉を換えるのと換えないのと、どちらが当る確率が高いか?

 1の段階で賞品を当てる確率は、明らかに1/3である。では、2で扉を換えると確率はどう変わるか。1/3?1/2?2/3? 答えは2/3となる。これはベイズの定理を適用することで得られる(適用しなくてもこの答えになるが)。たぶん直感とは異なるだろう。これでちょっとベイズ推定に興味を持っていただけただろうか。
 ベイズの理論は1764年に発表されたにもかかわらず、注目されだしたのはここ5,60年のことである。従来の確率論に対し、主観確率とも呼ばれる。客観確率があるランダムな事象から得られる普通にいう確率なのに対し、主観確率は、ある事柄が正しいと信頼できる度合いはどれくらいか、という意味での確率なのである。日本の学校教育で習うのは客観確率の方なので、初めてベイズの理論を聞いたときは、これって本当に正しいの?詭弁じゃないの?と思ってしまった。そう考えるのは私だけではないようで、この二つの確率論の支持者は互いに牽制し合っているとも聞く。でもこのベイズの理論は実社会の予測にかなり有効ならしく、Googleの検索機能や、Mozilla Thunderbird(私の使用しているメールソフト)の迷惑メール検出機能などにも使われているという。
 というように、ベイズの理論は非常に興味深いものなのだが、残念なことにこの本はおもしろくない。本書の読者対象は、ベイズの理論の詳細なんてどうでもよくて、ただベイズの理論を使って色んな予測をしたい、でもどんな予測に適応できるのか全然わからないから誰か教えて、というような人なのである。そんな人って滅多にいない。しかもそういう人をきちんと満足させられるかといえばそうでもない。書いてあることがわかりづらく、何とも中途半端な本である。まるでオタクが自分の趣味を素人に教えるのに失敗しているような、そんな感じだ(私もオタクと呼ばれることがあるが)。さらに言えば、うまいことを言ってMicrosoft SQL Serverを導入させようとしているんじゃないの、と疑ってしまう内容もある。著者はマイクロソフトの人間でもあるし。事実この本に書かれていることを実践してみようとすると、あるユーザー登録の場面に遭遇する。
 本書を読んで良かったことは、ベイズの理論は色々と使い道があるんだなあ、という認識を持てた、というただそれだけである。厳しい?

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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