『水とはなにか』上平 恒

 講談社ブルーバックス。うえだいらひさし。副題「ミクロに見たそのふるまい」。

 私にとって、水というものは、まずは飲み水のことだ。そしてその次に来るのは、川、海、湖を構成する水、さらにそれらは蒸発し、雲となり、また雨となって地上に戻ってくる、そんなマクロな水である。
 でもこの本で扱うのはそんなマクロな水ではない。本書は、それらとは対極にあるとも言える、ミクロで分子レベルの水、すなわちエイチツーオーの物性、振る舞いについて書かれた本だ。かなり深いところまで踏み込んでいるにもかかわらず、語り口は優しく、非常にわかりやすい。
 一番身近な液体とも言える水。それは実は全然普通の液体とは違っていた。気体である蒸気としての水、液体のごく一般的な水、そして固体の氷。それぞれの特徴は何であって、どんな構造をしているのか。そしてそれらは一体他の物質とはどのように違うのか。ものを溶かすとはどういうことか。他の物質との境目で水はどのように振る舞うのか。話はどんどん膨らむ。生体内では水はどんな働きをしているのか。麻酔と水との関係。生命に危険な温度の話。潜水病と水。低温生物学・・・。
 良書である。前半の丁寧な議論に比べ、後半少し走りすぎている嫌いはあるが、それでも常に科学的な目を失わずに水について真摯に語る著者の姿勢には好感が持てる。何よりこの本はおもしろい。
 マニアックかも知れないが、水のクラスター説を明確に否定している部分を読んで、個人的にほくそ笑んでしまった。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。