『ISOマネジメントシステムの崩壊は、何故起きたか』西沢 隆二

 近代文藝社。著者は長年ISOマネジメントシステムのコンサルタントをしてきた人物。
 ISOマネジメントシステムは現在のところ二つある(少なくとも)。品質マネジメントシステムであるISO9001シリーズと、環境マネジメントシステムであるISO14001シリーズである。本書はこれら二つの規格そのものの問題点と、それらを登録した組織に内在する問題、そしてその審査についての問題点を記した本である。
 著者は一貫して、組織の中心的な目的となる「コア活動」と、それをマネジメントする「マネジメント活動」を厳然として区別する。コア活動は利益を直接生み出し、マネジメント活動はコア活動の効率を高めることで間接的に利益を生み出す。組織にとって大事なのはコア活動であって、コア活動なくてはマネジメント活動もない。そしてISOマネジメントシステムはこのうちのマネジメント活動に関する規格のはずなのだ。だから、この規格に謳われているPDCAサイクル(Plan、Do、Check、Action)の採用は適切でないとする。「Do」は実施であり、コア活動に関するものだからだ。さらに、コア活動とマネジメント活動の違いを曖昧にすることは、ISO9001をきちんと運用していても品質が良くならない、ということにもつながる。品質マネジメント活動は「品質デ『コア活動』ヲ」マネジメントすることであるべきなのに、ここに『コア活動』が関わることを忘れがちなためだ(コア活動を行うことが「Do」なのであって、品質を管理することが「Do」なのではないことに注意。品質管理は「Do」に対して行う。こういう混乱が起きるから、規格としてPDCAを採用するとおかしくなるんだと私は思う。この辺わかりづらいとしたら、私の書き方が悪いです)。
 ISOマネジメントシステム規格には、守らなければならない要求規格(Shall要求)が存在する。個々の組織の具体的なマネジメントシステムは、「システム規格をもとに創造的に設計することが必要」となる。Shall要求さえ満たしていれば、どんなシステムを組んでもいいのだ。つまり個々の組織によって、色々なタイプのシステムが存在しうる。ところが実際には、書類重視型パラダイムに侵された大企業向きのシステムが、中小企業においても採用されることが多いという。著者はこれに異を唱えて、実際にコア重視型パラダイムに則った書類の少ないコンパクトなシステム構築をコンサルティングし続けている。この点においては審査機関や審査員にも問題があって、Shall要求に無いものまで求められるということが良くあるらしい。本書では、そのような多くの事例を紹介している。
 この本は、論点がしっかりしていて、話の進め方も論理的なので、ポイントがスッと頭に入ってくる。私が仕事上関わっているISOマネジメントシステムの問題点もあぶり出されていて、非常に参考になった。何ごとでもそうだが、表層的な理解ではなく、ベースをしっかりと理解することが大切なのだ。ISOマネジメントシステムのベースとなる考え方を学べる良い本だと思う。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。