「現代木彫の潮流」北海道立近代美術館

 「創造と回帰 現代木彫の潮流」。2010年9月11日~10月17日。抽象、象徴的な作品から具象作品まで、1960年代から現在に至る25人の作家による50体の木彫作品を展示している。
 私は船越桂(ふなこしかつら)の彫刻を観たくて会場に行った。ちなみにパンフレット表紙は、彼の「点の中の距離」という作品である。ヒトをモデルにしながらも、どこか地球人らしからぬ独特の雰囲気を漂わせている彼の作品に強く惹かれる。その独特の雰囲気は表情のせいなのか、それともこの女性のように首が長すぎるとかの身体的特徴のせいなのかはよくわからない。そういえば彩色された木彫を、それとして初めて認識したのは彼の作品からだった。この展覧会に出品されている現代作家の多くは木彫に彩色を施しているが、彼の影響も大きいのだろうか。
 抽象的な作品で私が大きく感銘を受けたのは、岩下碩通(いわしたひろみち)の「蝉時雨」である。大きな正方形の板に彫刻刀で細かな刻みを入れ黒く着色したものを縦横2枚ずつに並べた(つまり4枚の正方形で、さらに大きな正方形を作っている)だけの作品であるが、彫り跡の有機的な揺れがうねりを感じさせ、実際に蝉時雨のただ中に佇んでいるような気にさせられる。他に、巨大な果物を思わせる大平實(おおひらみのる)の「Casa」、「起源」の存在感にも圧倒された。
 具象では、櫻井康弘(さくらいやすひろ)と土屋仁応(つちやよしまさ)が気になった。女性の頭部と長い髪だけから成る櫻井の「Untitled」はその生々しさにドキリとさせられる。対して土屋は、人魚や動物をモチーフにした幻想的で霊性すら感じさせる作風が特徴的である。その柔らかで滑らかな質感はまるで生きているようで、自分が絵本の中に入り込んでしまったかのような錯覚に襲われる。
 会期ぎりぎりで危なく行きそびれてしまうところだったが、興味深い作品の数々に出会えて良かった。

北海道立近代美術館HP

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。