『UTAU』大貫妙子 & 坂本龍一

 2010年。「うたう」。
 絞り出すように、一音一音を大切に歌い上げる大貫の声を、寄り添うようにしながら、しっかりと支える坂本のピアノ。一本の樹木が床下から這い出てきて、それが徐々に部屋中に生い広がるように、音が、私のいる空間を満たしていく。それらの音は、現にそこにあり、まるで手で掴めそうだ。ピアノと歌だけの、たったそれだけの世界なのに、それは大きくて深い。
 アルバム内の曲は、坂本の曲に大貫が詞をつけたもの、もともと大貫の曲を編曲したもの、童謡など、さまざまである。その中で、坂本の作曲したものは構造的、構成的な感じがするのに対し、大貫のそれは少し感傷的な印象がある。それでいて、動的に絡み合う歌とピアノは、お互いに相手を引き立てあい、見事な統一感を見せている。それは、ややルバート気味に勿体ぶって奏でられるピアノの音が、不揃いな10本の指それぞれの息づかいを感じさせていることと、無関係ではあるまい。そのあふれ出る人間味は、「Instrumentals」と名付けられた2枚目のCDでも変わらない。こちらは、坂本のピアノが中心となっているにもかかわらず、大貫の存在感も十分に伝わってくる素敵なCDである。
 そんな二人の魅力が詰まったアルバムなのであるが、なぜか私が感情移入してしまう曲は、大貫が作詞作曲した、5「夏色の服」、10「四季」、11「風の道」の3曲である。坂本の作曲した1「美貌の青空」だって、2「Tango」だって、悪くはないのに。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。