『ピアノ・ノート』チャールズ・ローゼン

 みすず書房。Charles Rosen。朝倉和子 訳。副題「演奏家と聴き手のために」。著者はピアニストにして音楽批評家。フランス文学者でもある。
 ピアノはどんな楽器なのか。どんな仕組みで音が鳴って、だから調律師はどんなことをやらなければならなくて、ピアニストはどうやって音を奏でるのか。ペダルの使い方は?タッチは?運指は?椅子の高さは?はたまたピアニストが目指すべきものとは?等々。これらは時代によっても作曲家によっても違ってくるし、ピアニストによっても違ってくる。正解があるようで無いようで、でも厳然とこの本の中にはあって。かと言って作品ごとの、演奏者ごとの解釈の多様性を認めていないわけでもなく。(私の)話がまとまらない・・・。あらぬ方向に行ってしまった。

 ピアノを弾くというのはどういうことか。逆にピアノを聴くというのはどういうことか。どうやって聴かれてきたのか。ピアノという楽器の優位性と欠陥とは。そしてそれに対して、作曲家、演奏家はどのようにつきあってきたのか。コンサートやレコーディングにおいて、演奏家は何を思っているのか。さらには音楽教育における音楽学校とコンクールへの批判に至るまで、本書の話題は尽きない。
 ピアノ演奏はスポーツの一形態だと述べる著者は、ピアノと人間の身体との関係を問い直し、ピアノとピアノ音楽がどのように身体性を取り込みつつ発達してきたのかを論じ、読者を本書に引き込む。そしてそのあとは彼の独壇場である。バロックから現代まで時代を駆けめぐり、数多くの作曲家、作品、そしてピアニストを引き合いに出しながら(ときには譜面を参照しつつ)、自由自在にピアノを語る。ピアノによる音楽を語る。ここで紡がれた言葉の数々は軽妙さを装いながらも、その内容は実に奥深い。
 私は本書に出てくる曲のことはほとんど知らず(耳にはしていると思われるが)、ピアニスト個々人についても名前くらいしか知らない。しかしそんな私でも、この本は文句なくおもしろい。ピアノを演奏する人はもちろん、他の楽器を演奏する人、ピアノを自分では弾かないけれどもこの楽器に少しでも関心のある人は、一度目を通してみてほしい。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。