『ぬちぐすい みみぐすい』夏川 りみ

 2011年。
 沖縄の人は、おいしいものや体によい食べ物のことを、愛情を込めて「ぬちぐすい」(命の薬)と言ったりする。だから「みみぐすい」も同じように、耳の薬、つまり耳によい音楽のことなんだと思う。
 1「ゆりかごのうた」、3「この道」、6「赤とんぼ」、7「おぼろ月夜」、10「椰子の実」。このアルバムを見たとき、正直なところ、どうして童謡とか唱歌を歌わせるんだろう、あるいは歌うんだろう、と思った。最近は歌さがしと称してカヴァーばっかりしているのも、なんだかいやだった。もっとオリジナルで攻めていけばいいのに、と。でもこのアルバムができた背景を見ると、今このときだからこそこういうアルバムを作ったんだな、ということがわかる。このアルバムをレコーディングしたのは、夏川の妊娠中から出産後にかけてだったんですね。きっと子供に贈るアルバムという意味もあったんでしょう。子供の名前は「音来(ニライ)」といって、アルバム中の2「ニライの風」、12「ニライ・カナイの子守唄」がこのことと無縁であるはずがない。この2曲はそれぞれ、新良幸人/知念輝行、佐原一哉から贈られたものだが、夏川のデビュー当時からのイメージを壊さない、まさに彼女が歌うためにつくられた感じのする曲だ。
 上で、どうして童謡とかを歌うんだろう、と書いたものの、実際に聴いてみると意外によい。歌唱力がすごいのだと思う。普通なら、えっ、ここでそう来るの?その歌い方はちょっとこの曲には・・・、というのがありそうなものだけれど、そんな引っかかりのようなものはまるでなく、すんなりと心の奥に歌声が入ってくる。
 八重山民謡の5「あがろーざ節」がいい。声の伸び、透明感、それでいて力強さがある。こういう歌は実力がないと歌えない。下地勇から提供された11「景色」もいい。壮大で、広がりと深さを感じさせる。これは曲自体がすごくいいですね。あと、気に入ったのは4「寶貝(BAO BEI IN THE NIGHT)」。台湾のシンガーソングライター、張懸(チャン・シュエン)の曲で、寶貝(バオベイ)はベイビーの音訳。ここでも子供が絡んでます。すごくかわいらしい曲で、中国語の雰囲気とメロディーが何とも言えない。原曲と比べると「寶貝(in a day)」の方により似ているとは思うけど。
 ちょっとマニアックになるけれど、ギターの音がいいな、と思った曲を弾いているギタリストは決まって古川昌義。曲でいうと、1「ゆりかごのうた」、4「寶貝(BAO BEI IN THE NIGHT)」、6「赤とんぼ」、11「景色」の4曲。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。