『新編 普通をだれも教えてくれない 』鷲田 清一

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 ちくま学芸文庫。
 普通をだれも教えてくれない。この本もまた、普通を教えてくれない。
 一哲学者によるエッセイ集。でも恐れることはない。ひとつひとつのエッセイはたかだか3、4ページで、言葉遣いもやさしい。ただ、著者の本意を探ることは意外に難しい。ズバッとした物言いはしないタチなのか、核心を掴もうとすると、雲を掴むような感じになる。文章はやさしいのでさらりと読めてしまうのだが、後で振り返ると何を言いたかったのかわからない、ということがたびたびあった。問題提起型の文章が多く実際にしっかりとした主張をしていない、ということなのか、単に私の読解力が足りないのかはわからない。が、たぶん私が著者についていけていないのだろう。言葉が上滑りしていく。
 とはいえ、私でもおもしろかった話題はいくつかあった。例えば『透明なボク』の中にこんな文章がある。「人間が一番必要としているのは、自分がだれかの無視できない他人でありえている、という実感です。」(p.71)。これはすごく腑に落ちた。これがなくなると確かに辛い。他に、ある染織家に手渡された名刺に関するエッセイ、『おしゃれな名刺』がおもしろかった。この染織家の生き方を私もしてみたいのだな、と感じた。そこまでの度胸は今の私にはないのだけれど。
 全体を通した印象は、やっぱりふわふわとしているのです。そのうちエッセイ以外の鷲田の著作も読んでみたい。このままではあまりにも狐につままれた感じがするので。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。