『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』井上ひさしほか文学の蔵編

 新潮文庫。
 この本は、1996年に岩手県一関市で行われた3日間の「作文教室」をまとめたものである。「文学の蔵」の人が、井上の講義を文字に起こしている。
 「文章講座」ではなく「作文教室」なのには理由があり、基礎からやりましょう、ということらしい。一番のポイントはもう最初のページに書いてあって、
「作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね。」
に尽きてしまう。でもこれが一番難しいことで、プロにでもなかなかできないという。このことを教えてもらったことだけで、この本を読んだ元は取ってしまった。
 他に、文は短い方がいいだとか、一人称はほとんど必要ないことが多いだとか、色々なことがポイントを絞って語られる。私は全然これらのことを実践していないな、と思いながら、反省しつつ読み進めた。ときにユーモアを交ぜながらも、話が国語教育批判に及ぶなど、硬軟とりまぜた話がおもしろい。
 本書の最後には、生徒の書いた原稿用紙1枚の作文と、それに対する著者の添削が26編収められている。これが実に役に立った。わかりやすく人に伝える文を書くにはどうすればよいのかが、直にわかった。
 この本に書かれたことがすべての場合において正しい、とは思わない。でもとても大事なことが書かれている。たまにこうして基本に立ち返ることはよいことだ。一応文章を人に公開している自分にとっては。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。