『正しい楽譜の読み方』大島 富士子

 現代ギター社。副題「バッハからシューベルトまで~ウィーン音楽大学インゴマー・ライナー教授の講義ノート~」
 副題にもあるとおり、ウィーン音楽大学のインゴマー・ライナー教授の「歴史的演奏法」についての講義をまとめた本である。守備範囲はバロックからウィーン古典派まで。主にバッハの楽譜を中心に話を進めている。薄い本だけれど、中身は濃い。
 バッハの楽譜には、テンポ、強弱、楽想などを表す用語や記号類がほとんど書かれていない。このことについて、「何も書いていないのだから何もしてはいけない、強弱もレガートもすべてその類のものはつけてはいけない」とする立場と、「何も書いていないのだからその解釈は演奏家の任意によるべきである」という立場が、ロマン派を通して生まれた。でもそのどちらも間違っている、と著者は言う。バッハの楽譜に記号類がほとんどなかった理由はちゃんとあり、それがわかれば、正しく楽譜が読めるようになる。つまりそれらの楽譜を前にしてどのように演奏すればよいかがわかるようになる。これが本書の趣意である。
 大きく分けると、テンポ、舞曲、装飾音符、アーティキュレーションの4つについて書かれている。それぞれ興味深い話であるが、舞曲について、クーラント、サラバンド、メヌエットなどの舞曲であれば自ずとテンポも強弱の付け方も決まってくる、ということが、その踊り方の説明から書かれているのでわかりやすい。メヌエットが非常に難易度の高い踊りで、どんな状況の中で踊られたのかなんていうこともわかって、実におもしろい。
 実際にバッハの楽譜を読み解くのは非常に骨の折れる作業ではあるが、バッハを演奏することのある人は是非この本を手に取ってみてほしい。楽譜の選び方まで書かれているので、きっと役に立つはず。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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