『プレリュード』村治 佳織

 2011年。『Prelude』。
 アルバムコンセプトとしては、過去に出した『Portraits』(私の記事)や『Soleil Portraits 2』(私の記事)に通じるところがある。しかしこれらのアルバムを聴いたときのようなワクワク感というものはない。ライナーノーツにもあるように、おそらく震災を意識したためであろう。祈りのような内省的な曲が多く、それらのイメージがアルバム全体を覆っている。それは、坂本龍一作曲の2「プレリュード」や13「スモール・ハピネス」、そしてF・モンポウ(F. Mompou)の(3-8)「コンポステラ組曲」に色濃い。
 ただしこのアルバムはこのような曲ばかりでできあがっているわけではない。ポップスなど採られた、ビー・ジーズの1「愛はきらめきの中に」、ニール・セダカの10「雨に微笑を」、ビートルズの14「フール・オン・ザ・ヒル」などのような曲もある。「雨に微笑を」では、「雨に唄えば」や「オーバー・ザ・レインボー」のフレーズがさりげなく入っていたりして、遊び心もある。でも全体的にはなぜか暗さが目立つのだ。『プレリュード』というタイトルには、未来への前奏曲という意味合いを強く込めているらしいのだが。
 よくギター1本でここまでオーケストラ感を表現できるものだと感心したのは、(11-12)「ギターのための《くるみ割り人形》組曲」。このアルバムではギター用ではない曲の編曲を担当したのは佐藤弘和であるが、彼の力量はこんなところでも感じられる。個人的に一番好きだったのは、マーラーの「交響曲第5番嬰ハ短調」より9「アダージェット(第4楽章)」。美しく透明感のある仕上がりになっている。それに対して好きではないのだが、ギター曲として完成されていると感じたのは、カルロ・ドメニコーニ(Carlo Domeniconi)作曲の(15-18)「コユンババ」(13世紀南トルコに住んでいた古い伝説の隠者の名前だそうです)。物語を感じさせる旋律は、ここでもやっぱり悲しみが宿っている。最終曲の19「スターダスト」で、少しだけ明るい未来を予感させているのだけれど。

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shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。