『日本語のデザイン』永原 康史

 美術出版社。
 日本語の文字、特にひらがなのデザイン、さらには冊子や書物の中での日本語や文字レイアウトのデザインの歴史について、主に書かれている。古いものでは万葉集から、平安、鎌倉、江戸、明治、戦前、戦後と、デザインの系譜をたどりながら、今後の日本語のデザインはどうなっていくかまで、追っている。掲載されているカラー図版は大きくて美しい。さらに量も多い。これらの図版を見ているだけでも楽しい。中身もよく調べられている。
 しかしながらこの本は中途半端だと思う。史実に基づいた記述は詳細で役に立つものの、時折見せる根拠不明の断定口調にかなりのストレスを感じる。全般的に研究書のような体裁を醸しながら、 著者の嗜好が何の前触れもなくひょいと顔を出す。著者は研究者ではなくグラフィックデザイナーだから、ある程度はしょうがないのかもしれない。でもそれなら逆に、著者の考えるデザインのあり方といったようなものを前面に押し出していけばよかったと思う。なまじっか研究書然としているものだから、著者の考えが根拠もなくはめ込まれると、読む方はとまどってしまう。突然アルファベットについての考察が出てくるのもよくわからない。
 いろいろと批判してしまったが、大部分についてはとても参考になるし、目の肥やしにもなる(何しろ美しい)。そして、今後も本書に目を通す機会は何度かあることと思う。だからこそ詰めの甘さがもったいないとも感じるのだ。もう少し時間をかけて作り上げればよかったのに。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。