『ロールズ』Ch. クカサス、Ph. ペティット

 勁草書房。副題「『正義論』とその批判者たち」。訳:山田八千子、嶋津格。RAWLS, A Theory of Justice and its Critics by Chandran Kukathas and Philip Pettit。
 前半はジョン・ロールズによる『正義論』の概説、後半はリバタリアニズムと共同体論(コミュニタリアニズム)からの批判とその応答、『正義論』以後のロールズの思想、といった構成を取っている。
 『正義論』は、道徳哲学あるいは政治哲学としての正義を論じたもの。もしも私たちが、自分が一体どんな国のどんな階級の人として生まれたのかもわからない「無知のヴェール」に包まれた「原初状態」にあるのだとしたら、どのような社会=政治的な制度配置を選ぶだろうか、というようなことを論じている。そしてそのように選ばれた政治配置は実行可能性が高いものだと想定されている。『正義論』のポイントは、契約論的アプローチと実行可能性の議論にあるらしい。ロールズが拠って立つとされるリベラリズムは、個人の自由と平等を守ろうとするものであり、アメリカの自由民主主義の価値観が根強い。その点で、世界中の様々な社会においても同じような議論が成り立つのかどうか疑問なところもあるが、「原初状態」から始まる理論の展開は、私にとっては魅力的に見えた。
 本書は一応入門書の位置づけではあるものの、『正義論』の概要を知らない人がいきなりこの本を理解するのは難しいと感じた。少なくとも私はあまり理解できていない。でも後半の、批判に対するやりとりはおもしろい。ロバート・ノージックによるリバタリアニズムからの批判と、マイケル・サンデルによる共同体論からの批判である。特にサンデルによる批判はうなずける部分も多く、ロールズ理論を少し共同体論側にシフトすると、おもしろい理論になるのではないか、と感じた。
 最後に、あくまで個人的な感想だが、訳はひどいと思った。直訳的で日本語としての体を成していない。日本語の文章を読んでいるのに、主語はどれで、どの言葉がどの言葉を修飾して、この部分は挿入で、とか考えながらでないと文の構造が理解できない、というのはどうなんだろう。本の内容を理解する以前に、かなりストレスだった。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。