『須賀敦子全集 第1巻』須賀 敦子

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 河出文庫。
 かつてイタリアに渡り、カトリック左派と呼ばれるグループの拠点、あるいはサロン的存在だったミラノのコルシア・デイ・セルヴィ書店に出入りし、のちにそこで夫を得、夫亡きあとは日本に戻って活動するようになった、そんな著者による初期のエッセイが収められている。『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『旅のあいまに』の3編である。しかし初期とはいえ、彼女が日本で文筆活動を行ったのは晩年の10年ほどであるから、若い頃のエッセイではない。
 初めて読んだ彼女の本は『コルシア書店の仲間たち』(私の記事)だった。書店に出入りするひとりひとりにスポットを当てて、やわらかく包み込むように、あたたかく、それでいながら確かな筆致で描く人物像に、強く引き込まれたのを覚えている。私が彼女の全集のはじめの一冊を手に取ったのは、そんな縁があったからである。本書のほかの2編も、ある特定の人物を起点にして話がふくらんでいくのは変わらない。生きるということは人とのかかわりなんだ、とあらためて認識させられる。それにしても彼女の描く人物はどれも生き生きとした魅力にあふれている。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。