『「認められたい」の正体』山竹 伸二

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 講談社現代新書。副題「承認不安の時代」。
 「認められたい」というおそらくほとんどの人が持っている欲望、承認欲望。著者はこの欲望に係る承認を三つの類型に分ける。家族や恋人、親友から受ける、無条件にその人であることだけで認めてもらえる「親和的承認」。同僚や同級生などの一定のグループから認められる「集団的承認」。そしてもっと広い社会的関係にある他者一般から受ける「一般的承認」。この三つの類型が互いに補い合いながら承認欲望が満たされていくわけだが、これがなくなると生きる意味さえなくしてしまいかねない状態におちいる。そのために「空虚な承認ゲーム」をくり返す人々も出てくる。しかしこの承認ゲームは本当に認め合っているわけではなく、単に場の空気に合わせているだけだという。ではそうならないためにはどうしたらよいのか。それには「一般的他者の視点」が重要だと著者は説く。
 フッサールの現象学、フロイトの心理学などを交え、実際の場面を例示しながら承認欲望の正体を解き明かし、最終的には承認不安からの脱却を目指す。その肝となる視点が「一般的他者の視点」である。著者はそこに希望を見いだしているものの、私はまさにその部分に不安を覚えた。相対主義が幅をきかせているこの世の中で、「一般的他者の視点」は規準たりうるのかどうか。
 今までどうしても好きになれなかったフロイトに対する理解が実は誤解だったかもしれないことを教えられたり、家では反抗的な保育園児が外ではいい子である理由についての考察など、なるほどと思うことがたくさんあった。自由と承認欲望との関係についての考察も深い。しかし全体的に議論がちょっと雑に感じた。この内容であれば、本の分量を多くして、もっとしっかりと論じた方がよかったと思う。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。