『脳には妙なクセがある』池谷 裕二

 扶桑社。
 「脳は妙に自分が好き」、「脳は妙に笑顔を作る」、「脳は妙に議論好き」など、26の脳の妙なクセを、豊富なデータ(研究)を引き合いに出しながら軽妙に語っていく。それぞれのクセには3~10程度の小ネタが含まれていて、話題は尽きないといった感じだ。やさしい語り口で、飽きさせない。人間の活動のほとんどが脳と関わり合っているんじゃないかとさえ思ってしまう。
 一見脳に関する話題を無造作に並べただけのようにも見える本書であるが、最後の方、特に22章の「脳は妙に不自由が心地よい」あたりからちょっとある方向に収斂していく印象を受ける。それは身体と脳の関係ともいったもので(11章でも取り上げられているが)、人間は脳だけが単独に働いているわけではない、ということがやんわりと、しかししっかりと主張されているように感じる。身体性は重要な観点なのだ。この後半部分には、自由意志はあるのかだとか、自己とは何かといった哲学的な話も出てきて、結構おもしろい。もともと科学は哲学から派生してきたものなのだろうけれど、その歴史のとおり、哲学的モチーフが科学に還元されていくというのを見るのは興味深い。
 脳を知ることは、人間や人生を肯定する、あるいは自分や他人の行動や考えに対して寛容になる、ということに通じるのではないか。そんなことを考えさせられた。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。