『HERO』木村 大

 2013年。
 木村のギターはもうクラシック・ギタリストの枠にははまらない。ライナーノーツで間接的に述べているように、彼は「”クラシック・ギタリスト”というよりも、”いちギタリストなのだ”」。それは以前から何となく感じているところでもあって、彼の弾くクラシックの曲は力強く荒々しくて、逆にそれがクラシックとして聴くとどこか居心地の悪さともいえるものを感じさせて、私が彼のアルバムをあまり聴かない理由ともなっていた。しかしこのアルバムはどうだろう。往年のロック、ポップスのカヴァーからなる本作は、彼の一種独特の個性と見事にマッチして、すばらしい出来に仕上がっている。タッピング、ボディヒット、ライトハンドもいとわず、クラシック風なものからスパニッシュ、そしてニューエイジ系ともいえるほどまで、幅広い演奏を披露している。
 このアルバムを手に取ったのは、かつてオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)のギタリストだったランディ・ローズ(Randy Rhoads)による『DEE』という小品が入っていたからだ。クラシック・ギタリストになりたかったともいわれるランディ・ローズの曲が、まさにクラシックのルーツを持つ木村によって弾かれるということが、何とも興味深かった。そして実際に聴いてみると、寒気がするほどいい。この曲はムソルグスキーの『展覧会の絵』のモチーフを含む『賢人(The Sage)』(EL&P, Greg Lake)と合わせて、本アルバムの中でも、よりクラシックっぽい仕上がりになっている。クラシックっぽいといえばスティング(Sting)の『Fragile』もそう感じたが、これは村治佳織ヴァージョンを先に聴いていたせいなのかもしれない。
 原曲の雰囲気を損なわない安定感が見られたのは、ミニー・リパートン(Minnie Riperton)の『Lovin’ You』とエリック・クラプトン(Eric Clapton)の代表作『Change the World』(クラプトンが作った曲ではない)。『Lovin’ You』では効果的にハーモニックスが用いられているが、その場所が押尾コータローによる同曲のカヴァーと同じメロディの部分だというのは偶然なんだろうか。
 かっこいい、と思ったのは、ヴァン・ヘイレン(Van Halen)の『Spanish Fly』、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)の『Purple Haze』、そして木村自身のオリジナル曲『earth』。『earth』はすごくいい。ニューエイジ系という感じだが、ジャンルと関係なくギターの魅力があふれている。これがクラシックギターで演奏されているとは信じられない。
 このアルバムはかなりお薦めです。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。