『フェルメール 静けさの謎を解く』藤田 令伊

 集英社新書。
 フェルメールは「静謐の画家」とも呼ばれている。では彼の絵はどうしてそんなに静かなのか。これまで、このことについて真正面から取り組んだ分析はほとんどなかった。本書はそこにスポットを当てて、フェルメールの絵を読み解いていく。使っている色の種類、ひとつの絵の中に含まれる色の数、素材の選び方、光、現実感と非現実感の共存、構図、絵の持つ意味、時代背景。そんな様々な観点からフェルメールの静けさに迫っていく。
 著者がフェルメールの描いた絵の中で「静か」な作品だと見なしているのは、実はそれほど多くない。 『窓辺で手紙を読む女』、『牛乳を注ぐ女』、『窓辺で水差しを持つ女』、『青衣の女』、『真珠の耳飾りの少女』ほか数点といったところだろうか。そして明らかに著者は他の作品よりもこれらの作品の方が価値が高いと見なしている。著者はこれらの絵が大好きなのである。それはそれで構わないのだが、その著者の思いがあまりにも強く本書には現れているので、読んでいてちょっと引いてしまう。もしかするとそれは文体のせいなのかもしれない。「静けさ」を扱った本のわりに、文体は騒がしく、そして軽い。論点は比較的しっかりしていると思うが、それぞれの論点についての掘り下げは浅く、雑な印象を受ける。この本が新書という形態を取っている以上、しょうがないことなのだろうか。少し残念な気がする。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。