『MAIDEN VOYAGE』Salyu

 2010年。
 ときにハスキーなのに張りのある歌声。少しもたついた感じもするねっとりとした歌い方。その声が上質なメロディに乗ってやってくる。こう書くと、声に対してあまりよいイメージがわかないかもしれないけれど、実はこの声がとても好きだ。初めはそんなに好きではなかった。『landmark』、『TERMINAL』といったアルバムの頃だ。でもなにか耳に残る声で、ずっと聞いていないとまた聞きたくなる。そんな声だった。そしてこの処女航海という名のアルバムで、私の好みと彼女の声がぴったりとはまった。もう3年も前のアルバム。どうして今まで聴かないでいてしまったのか。そういえば日本女性のポップスを聴くのは随分と久しぶりのことだ。私は耳が悪いのか、歌詞がよく聞き取れない。だから日本人だろうと外国人だろうとあまり関係がないと、そう思っていた。でもそれは違う。このアルバムを聴いていてそう思った。歌詞全体はうまく聞き取れないけれど、各々のフレーズに寄り添った日本語歌詞のひとつひとつはなぜだかじんわりと心に染み込んでくる。意味はわからないままなのに。英語を聞くときとは違う感覚。不思議な安心感。この人の音楽とは戦う必要がないんだ。ただ受け入れていればいいんだ。そうやって身をゆだね、一週間かけ流していた一枚。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。