『構図がわかれば絵画がわかる』布施 英利

 光文社新書。
 構図というのは、ある枠の中、それは絵画であったり写真であったりするのだが、その中で、どういう風にものを配置するか、線を配置するか、そんなことを示したものだとこれまで思っていた。しかしどうもそういう私の理解は正しくないようだ。この本は構図のことをこのようには捉えていない。この本には黄金比率も3分割法も出てこない。では構図とはなんなのか。著者は、構図にあるものはたったひとつのことだと言い、「構図は、宇宙を要約したものです。」と言い切る。
 実際のところ、私はこの本を読んで構図とはなんなのかわからなくなってしまった。点や線、形がつくる構図というのはわかる。遠近法のこともわかる。光や色がつくる構図も、何とか食らいついていくことができる。でも、「時間の構図」、「空間の構図」と言われてもよくわからない。「人体の形態や構造の中にある『構図』」というときの構図の意味もよくわからない。なぜ仏陀の生涯についての解説がこの本に必要なのかもわからない。ましてや「構図は、宇宙を要約したものです。」と言われてもまったくピンとこない。私はこの本を読んでも構図のことがわからなかった。つまりその先にある絵画もわからないということだろうか。
 いや、この本を読むと絵画のことはわかったような気になるのだ。この本には絵画全般についてのことが書いてある。私からするとそれは構図の範疇には入らないのだが、確かにそれら全体のことを「構図」と呼ぶのなら、この本のタイトル『構図がわかれば絵画がわかる』というのもある程度正しいのかもしれない。ちょっとややこしいけれど(私の書き方がややこしいのですね、きっと)。
 私が「構図」という言葉に引っ張られなければ、この本はもっとわかりやすく、おもしろいものだったのかもしれないということである。例えば最終章は「美術解剖学」についての解説だったが、非常にわかりやすく、興味深いものだった。著者の専門が美術解剖学であることと無縁ではあるまい。
 なんだかいろいろと書いてしまったが、(構図という言葉を無視して、)純粋に本書を「絵画入門」であると捉えるならば、この本は絵画へのいい案内役となってくれることだろう。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。