『はじめてのゲーム理論』川越 敏司

 講談社ブルーバックス。副題『2つのキーワードで本質がわかる』。
 ビジネス、経済のみならず、生物学や物理学、政治学、社会学、認知科学など多方面にわたる分析道具として使われているゲーム理論を、2つのキーワードをとっかかりにして解説している入門書。ここでの2つのキーワードとは、「ナッシュ均衡」と「パレート効率性」である。私はこの2つをうまく説明できないのだが、簡単に言ってしまえば、プレイヤーが利己的に行動した結果の落ち着きどころが「ナッシュ均衡」で、みんなにとっていい結果を導くのが「パレート効率性」なんだと思う(自信がない)。このキーワードをうまく説明できないことで、私が本書をよく理解できなかったことがばれてしまいますね。それはさておき。
 ゲーム理論はとってもややこしい。自分がこう動いたら相手はこう動くから、自分はこうやって動いたら得になる、といったことを感覚だけでなく数字で考えていく。だから数学とは切っても切れない縁があるのだが、本書ではそんなに難しいことはやっていない。ただ、ややこしいので、読者はきちんと丁寧に筋を追って考えてついていかないと、取り残されてしまうことになる。初めは、簡略化したポーカーの話や有名な囚人のジレンマといった話題を取り上げて説明しているが、それがメカニズム・デザインの話になり選挙の話になり最後は量子ゲームの話になって、この最後の話題になってくると私は狐につままれたような気持ちに落ち込んでゆく。量子ゲームはちょっと次元の違う話のような気がする。でもこれからは量子ゲーム、あるいは量子力学の知識を使ったまったく新しい世界が切り拓かれていくんだろうなという予感だけは持てた。ただしその理論は常人には理解が及ばず、市井の人はただその恩恵だけを受けるというブラックボックス化された世界を生きることになるんだろう。まあ、今のITネット社会も似たようなものなのかもしれないが。なんだか話が逸れた。
 これは子供だましの入門書ではない。きちんとゲーム理論の本質に近いところまで持って行ってくれるしっかりした本だと思う。ゲーム理論の面白さだけを説くのではなく、その裏にある理論のかけらも示してくれる。巻末には丁寧な参考文献の紹介がついているので、その先にあるものを知りたい人にとってよい案内書となってくれている。ちょっとゲーム理論の入り口のドアを開けてみたい人に。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。