『本を読む人のための書体入門』正木 香子

 星海社新書。
 ふだん何気なく読んでいる小説や雑誌の文字。私たちはそれらの書体を意識して読むなんてことをしているだろうか。いや、大部分の人はそんなことはしていないだろう。そして、それはちょっとさびしい、と著者は考えているようだ。文字は「記憶を読む装置」であり、「書体を「見分ける」とは、文字の中に記憶を見いだすことである」。なんだかよくわからないけれど、そんな風にして、小説などに使われている書体の印象を文字に落としていくという作業を、著者は自信のウェブサイト(文字の食卓)で実践している。このウェブサイト自体はおもしろい。でも、このおもしろさはこの本からはあまり伝わってこない。なぜか。著者は自分がなぜ書体にこんなに惹かれるのか、その本当のところがつかみ切れていないのではないか。この本はそこにフォーカスを当てようとしているのに、残念なことにそのフォーカスがぼやけてしまっているのではないか。
 この本は小学生でも楽に読めるような、とても平易な言葉で書かれている。怖そうな文字はどうして怖そうなのかとか、テレビ番組『水曜どうでしょう』での効果的な文字の使い方とか、具体例を見ると確かに興味深いし、おもしろくもある。
 でも、私には著者が本当に言いたいことがよくわからなかった。書体の違いを知ることが、一体何につながるのか、よくわからなかった。著者の「伝えたいという思い」は伝わってくるものの、「伝えたいこと自体」は伝わってこなかった。たぶん、私の読みが浅いせいなのだろう。そうでなければ、きっと書体に対する考え方が、著者と私とでまるっきり違うのだろう。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。