『世界を変えた17の方程式』イアン・スチュアート

 Softbank Creative。水谷淳 訳。
 方程式といえば、中学で習う1次方程式だとか、2次方程式、連立1次方程式などを思い浮かべる向きも多いかもしれない。でもここで扱っている方程式はちょっとこれらとはニュアンスが違うんだと思う。方程式は大きく2つに分かれるという。ひとつは数学的な真理を表したもので、ピタゴラスの定理などがそれに当たる。そしてもうひとつは何か未知の量を計算する方法を教えてくれるもので、例えばニュートンの重力方程式などが当てはまる。上で述べた中学で習う方程式は、それらの解き方であって、何かの真理を表している方程式そのものではない。
 本書では、巷にあふれている方程式の数々から、世界を変えるほど歴史上重要だと思われる方程式を17取り上げ、それらの解説を試みている。上で述べたピタゴラスやニュートンの方程式、それに微積分や正規分布、波動方程式、フーリエ変換のような比較的わかりやすいものから、相対論やシュレーディンガー方程式、経済学のブラック=ショールズ方程式のような理解が難しいものまで、レベルはさまざまで、内容もまた多岐にわたっている。方程式を扱っているといっても、方程式そのものの説明や解法を詳説しているわけではなく、それらの方程式が生まれた背景だとか、その方程式を使ってどのような世界が拡がっていったのかなどということが書かれており、数学の本というよりは読み物的な本である。とはいっても侮ることはできない。ピタゴラスの定理だけをとっても、それは非ユークリッド幾何学に話が飛び、最後にはアインシュタインの一般相対論にまで話は拡がる。話の内容は刺激的で、実におもしろい。経済における先物やオプションが18世紀の大阪の堂島米会所に端を発しているなど、知らなかった小話がたくさん出てくる。しかも説明がわかりやすいので、自分の中で世界がどんどん拡がっていく。
 内容がちょっと難しい部分もあって、私はオイラーの多面体の公式に絡めてのトポロジーの話とか、相対論に絡めての宇宙論の話はよく理解できなかった。そんな風にわからないところもたくさんある本ではあるけれども、とてもおもしろい本である。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。