『日常礼讃』ツヴェタン・トドロフ

 白水社。Tzvetan Todorov。塚本昌則訳。副題『フェルメールの時代のオランダ風俗画』。
 17世紀のオランダで花開いた風俗画の数々。フランス・ハルス、レイステル、レンブラント(風俗画はあまり描かなかったが、本書では取り上げられている)、ヘラルト・ダウ、テル・ボルフ、ハーブリエル・メツー、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーン、ファン・ミーリス、ニコラース・マース、そしてフェルメール。そんな画家たちによって描かれた風俗画とは何だったのか。
 一見ただ単に日常を切り取っただけに見える画面。本当にそうなのか。鏡や頭蓋骨といったこの世の空しさを象徴するモノ、性的なものを連想させる犬やチェロなどの楽器、そんなモノが画面には描かれており、それが意味をなさないわけはない。つまり寓意である。モノだけではなく、場面もそれに加わる。乳飲み子と母親、手紙を読む女、書く男、酒を飲む女。それぞれの絵は当然、そんな寓意的な、道徳的なニュアンスを含むものとなる。
 でもオランダの風俗画はそんなコード化された意味だけが表現されたものではない。その意味を超えて、道徳や寓意に還元されない美を表現する。そして道徳世界と、それを超えた美の二面性、それがオランダ絵画の魅力なのだと著者はいう。そしてフェルメールが現代においても色褪せない理由についても考察していく。
 オランダの風俗画は私が一番好きなジャンルのひとつである(「genre」という単語には「風俗画」という意味もあるので、この文はなんか変な感じもするけれど、気にしないでください)。フェルメールはもちろんのこと、ピーテル・デ・ホーホなども好きな画家だ。本書には白黒ではあるが70枚の図版が掲載されており、オランダ風俗画へのよい案内書となってくれることだろう。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。