『芥川竜之介随筆集』石割 透編

 岩波文庫。
 芥川龍之介というと、やっぱり短編小説が有名なのだろう。けれども私は、個人的には警句集である『侏儒の言葉』みたいな小説じゃないものが好きだった。それで、こんな本が店頭にあったものだからつい手に取ってしまったわけだ。
 明治、大正、昭和にかけての東京のこと、文壇のこと、そして芥川の交友関係などについての話題が多い。読んでみると意外に語り口がやわらかく、ああ、彼も同じ人間なんだと身近に感じられる反面、交友関係を聞くとやっぱり遠い存在のような気もして、なんだか不思議な感じがした。また、やわらかい語り口とはいえ、芸術に対する態度はかなり鋭いものもあったりして、親しみやすさとともに、怖い(というか厳しい)イメージも持った。これを読むと芥川に対するいろいろな感情がわき出てきて、そしてそれらが全然違うタイプのものなのに不思議と同居している。それはまるで狐につままれているような感じなのに、なぜかほっとした気分になっている自分もまたそこにいる。なぜほっとした気分になるのか、自分でも全然わからない。けれども、読んでいてとても楽しい本だった。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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