『哲学思考トレーニング』伊勢田 哲治

 ちくま新書。
 本書は、哲学をする上での思考のスキルの一端を紹介することを目的としている。そしてそのスキルとしてクリティカルシンキングというものを取り上げる。クリティカルシンキングをそのまま訳すと批判的思考ということになるが、それは簡単に言うと、ある意見について筋が通っているかよく考える、といったようなことである。この手法について、自動車と飛行機のリスク比較や、ダーウィン進化論と今西進化論、生きる意味とは何か、といった実例を取り上げて解説している。
 この中で、議論の明確化、文脈の特定、前提の検討、推論の検討といったクリティカルシンキングの主要な要素について、 とてもわかりやすく解説している。懐疑主義とどう折り合いをつけるかという点が興味深い。哲学というと何となく揚げ足取りばかりしている印象もあるが、「思いやりの原理」という相手の身に立った考え方もあることを知り、堅苦しい哲学のイメージが少し和らいだ。
 クリティカルシンキングはとても論理的なスキルである。このスキルは哲学的思考だけでなく、実際に論理的な文章を書く上でも役に立つと感じた。そしてまた、この本自体も論理的に構成されていてわかりやすい。参考文献についての親切な解説も書いてあるのが嬉しい。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。