『ONE』木村 大

 2014年。
 彼はクラシックギタリストのはずだったから、このアルバムもその延長にあるはず。その予想が見事に裏切られた。前作の『HERO』私の記事)でもクラシック離れした演奏を披露していたから、そう驚くことではないのかもしれない。でもまさかスティール弦も使用するとは。はじめスピーカーから『Blackbird』(ビートルズ)が流れてきた時、クラシックっぽい奥行きを感じさせながらも何か違和感があったので、てっきり波形処理をしているのだと思った。でもそうではなくて、スティールを使っていた。
 もちろんクラシックギターの曲もある。『Nuovo Cinema Paradiso』(ニュー・シネマ・パラダイス)では、ひとつひとつの音をしっかりと紡いで凜として芯のある音色を聴かせていて、静かめながらも木村らしい力強さを持ち合わせた佳曲に仕上がっている。『My Favorite Things』では静から動へのダイナミックな移行が耳を惹く。壊れそうで叙情的な空気感が見事に表現された『Shape Of My Heart』や、フラメンコギタリスト・沖仁との『La Isla Bonita』、『Levanter』なんかもいい。
 スティールを使ったものでは、ニューエイジばりにはじけている『tune』にも驚かされるが、静かに紡いだクラプトンの『Wonderful Tonight』が美しい。後者は特にイントロの出だしのチョーキングが印象的だ。
 そんなアルバムも『When You Wish Upon A Star』(星に願いを)でしめやかに幕を閉じる。もう木村はクラシックギタリストの枠をはみ出してしまったのかもしれない。でもそれは悪いことではなくて、ギターの可能性をたったひとりで大きく広げている試みと言えるのだろう。ギターの音が好きな人は是非。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。