『医師と僧侶が語る 死と闘わない生き方』玄侑宗久、土橋重隆

 ディスカヴァー携書。
 数千件の手術を経験してきた土橋は、あるとき手術は成功しているのに癌が治らないということに意識が向き始める。「自分は何をやっているのか?」と。どうも手術で取り除いているのは癌の原因ではない。では癌の原因は何なのか。たとえば生き方とか性格なのではないか。肺癌の患者は病気を怖がる人が多い、胃癌の患者は生真面目な人が多いなどと、癌の部位による違いを本書の中で語っている。癌が治ってしまう人もいるということも、そのような文脈で語られる。そしてそれは、物事を二つに分けて善悪に分けるのはよくないという不二(ふに)の思想につながっていく。「病気は悪いものだ」という考え方をやめる、むやみに病気を治そうとしてはいけない、など。
 ある意味現代医療を否定するという一面がある。現代医療制度の中にいる私からすると、容易にはこれらの話を受け入れられない。でも腑に落ちる部分はある。私自身病気を抱えていて、病気を診断されて何年かの間は、病気そのものの症状だけではなく、精神的にもかなり苦しんだ。それが時間が経ち病気を受け入れ、病気に寄り添って生きるようになってから、大分楽になった。これは不二の思想の実践と言えるのではないか。
 実際のところ、すべて精神論などに行ってしまうのもやり過ぎだし、すべて現代医療の延長で解決できるというのも傲慢なのだろうと思う。本書の対談の内容に納得できたわけではないけれど、今の医療のあり方には問題があり、病気に対する違うアプローチが必要なのではないか、という問題共有はできたように思う。その違うアプローチから病気を治す未来は来るのだろうか。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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