『哲学入門』戸田山 和久

 ちくま新書。
 プラトンもアリストテレスも出てこない。それだけじゃなく、デカルトもヘーゲルもニーチェもフッサールも、私の好きなウィトゲンシュタインも出てこない。出てくるのは、デネット、ミリカン、ドレツキ、ペレブームといった耳慣れない哲学者ばかり。そう、著者は哲学史をなぞることで哲学入門としようなんて気は、さらさらないのだ。そうではなくて、読者をいきなり「哲学する場」に引き込もうとする。科学の発達した現代の、現在進行形の哲学の中に放り込もうとする。
 人間とロボットを分けるものは何?「意味」って何者?情報が伝わるってどういうこと?自由とか道徳って本当は何のこと?人生の意味って?
 そんな問いに、現代の哲学はどういう答えを用意しているのか。たとえ正解にたどり着いていないにしても、それらについてどう考えているのか。この本は、これらについてとても親しみやすい軽妙なタッチで、丁寧に解説している。でも馬鹿にしちゃいけない。語り口はやさしいけれど、議論は結構入り組んでいてややこしい。きちんと読んでいないと、迷子になってしまう。かなり本気な哲学入門なのだ。でもそれだけに読み甲斐がある。そしておもしろい。哲学って何をしている学問なのかな、と気になっている人には、哲学史に出てくるような有名な哲学者の理論を並べ立てるだけの入門書よりも、むしろこういう哲学の現場に居合わせている感覚を味わわせてくれる入門書の方が、哲学の世界に一歩足を踏み込むきっかけをつくってくれるのかもしれない。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。