世界思想社。副題『科学の方法・科学の目的』。
科学哲学史にあらわれるトピックをなぞりながら科学哲学を解説する、という点では入門書なのかもしれない。しかし、この本は単純に科学哲学を紹介する本ではない。著者の立場が色濃く表れていて、かなり突っ込んだ議論をしている。
ポパーの反証主義、デュエム、ハンソンらの観察の理論負荷性、クーンのパラダイム論といった、科学哲学の教科書には必ず出てきそうな理論に対し、かなり手厳しい批判をしている。著者は、ベイズ主義や反実在論といった立場に近い考えをしていると感じた。また、確率・統計と科学哲学との関係について多く記述しているのも印象に残った。
本書はやさしい本ではない。本当に入門書なのか、とも思った。じっくりと腰を据えて読むつもりなら悪くないのかもしれない。しかし、軽い気持ちでこの本に手を伸ばすと痛い目に遭う。