『白痴』ドストエフスキー

 新潮文庫。
 主人公ムイシュキン公爵がなぜ白痴と呼ばれるのか、物語のほとんどを読み終えるまでわからなかった。純朴すぎるという面はあるけれど、考え方もきちんとしており、周りの人たちともそれなりにコミュニケーションが取れている。魅力的ですらある。主人公よりも周囲の人間の方が一癖も二癖もあって変な人たちばかりだ。
 ドストエフスキーは「無条件に美しい人」を描き出したかったのだという。それを聞いて納得した。物語の始まる前と最後だけ白痴同然に設定されていた彼がまともに描かれているこの小説の大部分は、きっと泥の中に生まれた蓮のような存在というわけなのだろう。
 それにしても終盤の展開は驚くばかりだ。著者は「無条件に美しい人」を描くと同時に、この終盤を描きたかったのだと思う。ちょっと悲しい結末。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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