ちくま文庫。
「科学的なように見せかけているけれど、実はぜんぜん科学的ではないもの」。そんな「ニセ科学」について、どこが科学的ではないのか、ある家族(プラス友達)による会話形式で解説している本。水からの伝言、ゲーム脳、有害食品、血液型性格診断、地震予知、地球滅亡、アポロが月に行っていない説等について、章立てして詳しく書いてある。そしてほかにも、マイナスイオン、ゲルマニウムとトルマリン、ホメオパシーなどについても触れている。どうしてそれがニセ科学と言えるのか、きちんとしたデータと論理によって解説しているので、とてもわかりやすい。
多くの人は科学を信じていて、だから科学的なように聞こえる説明をされると、ついその事柄のことも信じてしまう。つまりだまされてしまう。この本はどうやったらだまされないでいられるか、その糸口を教えてくれる。「正しい科学知識を身につける」というのはもちろんそうなんだけど、著者はそれを含めて「ニセ科学にひっかからないための10箇条」としてまとめている。すべての分野において正しい科学知識を身につけるなんてどだい無理だから、そういう総合戦略をとるのだろう。ニセ科学の見分け方として、科学は間違えるけれどもニセ科学は間違わない、という言葉はなるほどと思った。
ただ、ニセ科学をひっさげている人は、科学を出汁にして人をだまそうとしている人ばかりじゃなくて、全然悪気なくニセ科学を科学だと信じて疑っていない人も多いのだろうと思う。「ニセ科学イコール悪」なわけではなく、「ニセ科学イコール間違い」と捉える科学リテラシーが求められているんじゃないかと思った。