Watson-Guptill Publications。副題『Experimental Techniques for Achieving Realistic Effects』。
著者は水彩でリアルな風景を描いている画家(イラストレーター?)。本書では、彼女が風景を描くときにどういうアプローチを取っているのかを、製作途中の図版を示しながら詳しく解説している。
といっても、ふつうに筆を使って色を混ぜて塗るというようなことについては、ほとんど触れていない。では何を書いているかというと、水や溶かした絵の具の入ったプラスチックのボトルから中身をピューッと画面に流して傾けてみたり、スプレーしてみたり、スタンプの要領でペタペタしてみたり、塩をまいてみたりと、筆じゃなくて水彩絵の具そのものの力をうまく利用して絵を描く方法について書いている。そこで欠かせないのがマスキングという技術だ。彼女はこのマスキングを駆使して、それ以外の部分を自由に水彩の流れに任せて画面を作っていく。
このやり方を聞いているだけだと本当に絵になるの?という感じかもしれないが、彼女の描く水彩画はとてもリアリスティックだ。空、雲、波、水面、木の枝など、まるでそこにあるようにドラマティックに描き出す。
デッサンや従来の水彩画の技法は身につけているのを前提として、さらに水彩画の可能性を広げさせてくれるのに役立つ一冊。