『「科学的思考」のレッスン』戸田山 和久

 NHK出版新書。副題『学校で教えてくれないサイエンス』。
 2部構成になっている。
 第I部では「科学的に考えるってどういうこと?」と題して、科学というものがどうやって世界を捉えて、どういう風に営まれているか、つまり科学とはどういうものかについて書かれている。理論、事実、仮説、実験、観察などがキーワードになっていて、プレートテクトニクスの話とかニュートンのやったこと、疑似科学などを例にしながら解説しており、とてもわかりやすい。
 第II部では、「デキル市民の科学リテラシー」と題して、被爆リスクを例にとり、科学者でない市民にとって科学リテラシーを身につける意味、そもそも科学リテラシーとは何か、市民とは何かという問題を扱っている。こっちの方は被爆リスクという実例があって、それに関連づける形で「デキル市民の科学リテラシー」を10個挙げているのだが、そのつながりは少しわかりづらい。とはいえ、市民を大衆とは区別して、市民が科学とどう向き合い、科学で解決できる部分と解決できない部分をどう見極め、科学とともにどのようによりよい社会を作っていけばいいのか、多くの示唆を与えてくれる。思うにこの後半部分に対する著者の思い入れは強かったのではないだろうか。内容的にもこの社会のあり方をも含む大きなテーマなので、新書版の一部を占めるだけの紙幅ではいい足りない部分も多かったのではないか。少しかけあしすぎて消化不良になった感があるので、第II部だけで1冊の本にして、十分な議論を展開してもらいたい気がした。
 全体としては、科学という営みについて知るためのよい参考書であると思う。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。