『アメリカ音楽史』大和田 俊之

 講談社選書メチエ。副題『ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』。
 ブルース、フォーク、カントリー、ジャズ、ロックンロール、ロック、R&B、ヒップホップなど、主に19世紀以降にアメリカに生まれたポピュラー音楽について、「擬装」つまり「他人になりすます」ということを軸にして論じている。それはミンストレル・ショウにおける白人が黒人になりすますことであったり、マイケル・ジャクソンにおけるその逆の擬装であったりさまざまである。本書では今述べたような白人と黒人、あるいはヒスパニックといった人種と音楽との関わりや、著作権という概念と音楽との関わり、思想と音楽、移民との関係といった、社会的、政治的、地政学的な様々な論点からアメリカ音楽史を論述しており、かなり内容が濃い。たとえばジャズやカントリーなどの一分野だけでも一冊の本になってしまうところを、ポイントを絞って重要なところだけをピックアップしているのだろうけれど、この本だけでも十分に詳しいアメリカ音楽の歴史が辿れてしまうところがすごい。
 本書には、数多くのミュージシャン、楽曲が取り上げられており、そのほとんどは私の知らない人たちであった。にもかかわらず、この本には強く引き込まれ、実に刺激的でおもしろかった。現在でも有名なミュージシャンたちだけが音楽史の中で重要な位置を占めていたわけではなく、今ではよほどのファンでもない限り知られていない人がキーパーソンになっていたりするのが興味深い。ゴスペルなどあえて触れられていないジャンルはあるものの、アメリカ音楽に詳しくない人でも、多少の知識を持っている人にとっても楽しめる本だと思う。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。