『コーヒーの科学』旦部 幸博

 講談社ブルーバックス。副題『「おいしさ」はどこで生まれるのか』。
 コーヒーについての本で、ここまで徹底的に科学的に書かれた本を私は知らない。おいしさやコクやキレといったものがどうして生まれるのか。それを単なる感覚の話ではなく、生理学的、化学的観点から突き止めていく。コーヒーにはどんな成分が含まれていて、そのどれが、苦味や酸味、甘さなどを感じさせているのか。口の中に残る余韻とはいったい何なのか。つまるところ、おいしさとはなんなのか。
 それだけではない。産地や地域、品種による味の違いを決めているのは何か。栽培方法、処理方法、そして、とても大事な焙煎、抽出方法等々。そこでは化学的視点はもちろんのこと、物理学的視点からもとことん分析していく。その徹底した著者の姿勢には感服する。
 経験からくる知識というものはもちろん大事だ。しかしそういった知識は個人の経験値を上げこそすれ、なかなか他の人の知識レベルを上げるという風にはいかない。そこはやはり経験してこそ得られるものだからだ。でもいったんこんな風に科学の言葉に訳してくれると、それは経験を超えてみんなの知識になり得る。世の中で起こることの大半は科学的には説明のつかないことだ、なんてうそぶいていたけれど、たかがコーヒーひとつをとってみても、ここまで科学的に解明されているのだ。それを知って驚くとともに、楽しさみたいなものもわき上がってきた。この本はおもしろい。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。