『考えることの科学』市川 伸一

 中公新書。副題『推論の認知心理学への招待』。
 「考える」ということはいろいろな側面があると思うけれど、この本ではそのうちの「推論」ということに照準を合わせて、認知心理学の立場から論じている。論理的推論、帰納的推論、確率・統計における推論。何だかこうやって並べてみるといやに難しく感じてしまうけれど、実際にはとてもわかりやすく書かれている。この本で紹介しているいろいろな事例は、他の類書でもよく出てくるものではあるが、ここまで本質的でしかもわかりやすい説明がなされているのはあまり例がない。ウェイソンの4枚カード問題やベイズの定理などは、この本を読んで初めて腑に落ちた気がする。
 著者はこんな風に述べている。人間はだいたいにおいて妥当でうまくやっていけるような推論の仕方をしているけれど、ときに大きな考え違いをしてしまうこともある(これがいわゆるバイアスとか言われるものだ)。別にそれが悪いと言っているのではなく、そういう考え違いのしやすさのクセを知っていると、もっと洗練された思考をすることができるようになるのではないか。本書で書かれていることいろいろな知見は、そういう前向きの視点で捉えるべきではないか。
 そのとおりだと思う。人間は日々いろんなことを考えて生きている。そんな当たり前のように存在している「考えること」について、ちょっと意識的に目を向けてみると、そこにはまた新たな世界が広がっていることだろう。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。